ワインは1日2 / 3本

勉強を人一倍頑張っている(と自負している)イタリア帰りの理系大学院生が、日々の勉強・読書・お酒について綴っています

人びとの一生① [女の一生 モーパッサン 訳・永田千奈]

 

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

 

今日はちょっと妙な心地でいます。

モーパッサンの「女の一生」を読み終えました。結構長い小説だと思うんですが、あまり日数をかけずに読み終わりました。続きが気になって気になって仕方がなく......。

 

ちょっと忘れないうちに色々書いておこうと思います。が、自分の中でも上手くまとまっていないので、笑 いつものようにふにゃりとした文章になると思いますが、よろしくお願いします。

 

・タイトルと内容の広がり

女の一生」というシンプルでありながら、心に残るこのタイトル。

主人公ジャンヌの人生を主軸にした作品です。

しかし、あくまで主軸であって、ジャンヌにばかり焦点が当たっているわけではありません。

この小説には本当に様々な一生が出てきます。

ジャンヌの父母に始まり、彼女の夫、村の神父、叔母、乳姉妹でもある女中、飼っている犬、召使い。

個性も豊かであり、一人ひとりの生き方もずいぶん異なっています。

ジャンヌを私とした一人称ではなく、三人称で書かれているため、少し距離を持って物語を眺められるんですが、そのせいもあって、読み進めながら一人ひとりの生涯に対する想像が自ずと湧いてきます

 

僕が初めに、「ああ、この物語はジャンヌ一人のものじゃないんだな」と感じたのは、ジャンヌの叔母さんが登場したときです。

 

彼女は子どもの頃から非常におとなしく、周囲の人と積極的に関わることがなかったため、誰からもあまり注意を払われずに成長してきました。

そんな彼女なんですが、20歳の頃に突然、身投げをしてしまいます。

命こそ落としませんでしたが、誰も彼女が自殺を図った理由を見出せず、変な奴が本当に変なことをしでかした、と更に周囲から避けられるようになりました。

 

ジャンヌの結婚に合わせて、叔母は彼女たちの元を訪れるのですが、そこでも人びとからは「ふうん、来たのね」くらいにあしらわれます。

彼女もそれに対して何か感情を示したりすることもなく、いつものように存在感を消して結婚式前後の日々を過ごしていました。

 

ここまでは僕も、ふうん、くらいに流していたんですが、叔母さんの存在が突如として胸に迫ってくる場面があります。

 

恐らく、僕には迫ってきた、というだけで、誰かにとってはもしかすると何てことないシーンなんでしょうけれど、

 

夜、散歩に出かけていたジャンヌとその婚約者ジュリアンが部屋に戻った際、

露で濡れたジャンヌの靴を見て、ジュリアンは「足は冷たくないか」とジャンヌを気遣います。

たまたま同じ部屋にいた叔母さんがその様子を見ていたんですが、震え出したかと思うと、そのまま泣き出して部屋を出て行ってしまいます。ただ、これだけなんです。

 

しかし、飛び出す前に叔母さんが残していったのは、

「私は誰からも、そんなことを言ってもらったことはない」

という言葉でした。

それを聞いたジャンヌとジュリアンは訳が分からず、笑いを堪えるのに必死になるばかりでした。

 

この何でもないようなシーンで、僕は何だか叔母さんのことを一気に想像してしまったんです。

小さい頃から大人しいという性質のせいで誰にも相手にされず、自殺を考えてしまうほど恐らく人生が退屈に思えてしまって、運良く助かった後も、別に誰かが気にかけてくれることもない。

そしてジャンヌと婚約者の何でもないようなやり取りを見ただけで、涙が溢れてしまう。しかし、ジャンヌとジュリアンは笑いを堪えるだけ。

ああ、一体どんな人生なんだろう、と想像するとたまらなくなりました。

このとき、この小説は様々な一生を含んでいるのではないか、と僕は思ったのです。

 

・恋愛の狂気とその後

プラトンパイドロスが大好きなんですが、それを彷彿とさせるような、恋愛の神的な力を感じられました。

 

この「女の一生」、冒頭から結婚式、新婚旅行までの描写が喜びに満ち溢れており、恋愛の美しさを見事に表現していると思います。(友達が読んでくれていると思うと、恥ずかしいですが笑)

 

あんまり詳しく書くとつまらないので、ちょっとに留めておきますが、

この序盤から、恋に落ち、そのことに喜びを覚え、世界の全てが輝いて見えるジャンヌの様子がありありと分かるのです。

恋の予感に胸をときめかせ、眠れない夜を過ごす少女ジャンヌの心情と、やってきた夜明けを、とても丁寧に、長く、美しく表現しています。

描かれる村や自然、人びとの様子も、とても生命の力に溢れていて、読みながら何だかこちらまで幸福な心地になってきます。

理屈や熟考から生まれるものではなく、直観と熱情による恋に取りつかれるジャンヌの姿が今でも思い起こせます。

 

しかし、勿論、恋だけで夫婦が上手くいくものではなく、いずれその炎は小さくなってしまいます。

その恋から愛へと変わる段階になり、この二人には愛はないのだと気付かされます。

新婚旅行や様々な行事を終えた後、ジャンヌが人生についてあることを嘆くんですが、

その嘆きの言葉がかなり悲痛なもので、しかしちゃんと的を得ているので、

多くの人が思わず頷いてしまうのではないでしょうか。

淡々と描かれているはずなのですが、こういった場面から人生の喜びと悲しみが感じられるような作品でした。

 

 

ちょっと中途半端ですが、まだまだ終わりそうもないので、笑 一旦ここで止めます。

また考えがまとまり次第、書いていきたいと思います。

長々と失礼しました。続きもまたよろしくお願いいたします。